この記事を読むと分かること

・「ちょこ停」がリーダーの巡回で見つからない構造的な理由
・「日報上は問題なし」なのに生産数が計画を下回ることが起きるメカニズム
・可視化をするだけで、メンテルールや生産計画の見直しのきっかけになる理由


生産現場で「ちょこ停」という言葉をよく耳にします。
機械が1分、3分、5分と、ちょこちょこっと短い時間だけ止まる現象を指します。
機械トラブルというほど大げさではないし、現場の人も「さっきのは止まった内に入らない」としか言わない。
だから日報にも記録されないし、リーダーの耳にも入らない。

しかし、このちょこっとした停止こそが、実は工場の稼働率を大きく下げている犯人なのです。
この記事では、なぜちょこ停が見つからないのか。見えるようになると何が起きるのか。実際の事例を交えてお伝えします。

「うちの機械、稼働率はどれくらいですか?」

工場を見学させてもらうとき、経営者や工場長によくこの質問をします。
返ってくる答えはほぼ次のどちらかです。

「ざっと、まぁ7、8割は動いてるんじゃないですかね」
「うーん、休憩とか段取りもあるし、まぁ8割くらいだと思います」

・・・ところが、実際にIoTデバイスでデータを取ってみると、稼働率が5割から6割というケースが驚くほど多いのです。
「そんなはずはない」と現場に聞きに行くと、現場も「いや、そんなに止めてないですよ」と言う。
しかしデータは5割と示している。

この「思い込み」と「実態」のギャップを生んでいるのが、他でもない「ちょこ停」です。

リーダーが見つけられない理由

ではなぜ、これほどの乖離が起きるのか。
リーダーはサボっているのかというと、もちろんそんなことはない。
現場をぐるぐる回って、必死に状況を把握しようとしています。
それでも見えないのには、3つの構造的な理由があります。

理由①:リーダーはそもそもそんなに現場にいられない

リーダーには現場を見る以外にも仕事が山ほどあります。
会議、管理部門との打ち合わせ、部下の面談、トラブル対応、書類作成。
現場にいる時間は1日2時間ということもあります。
その間に起きたことは、リーダーには見えません。

理由②:見た瞬間だけしか捉えられない

もし現場にいたとしても、リーダー1人で見られるのは「その瞬間」だけです。
5台の機械を同時に見つめることはできませんし、Aの機械の前にいる間に、Bの機械が5分間止まったことは永遠にわからない。
「ちょこっとした停止」は、見る人がその瞬間にそこにいない限り認識されないのです。

理由③:現場も「記録するほどのことじゃない」と思う

現場作業者にとって3分の停止は「ちょっとストップした」程度のもので、何かしら調整してすぐに動けば「そういうもの」として処理されます。
わざわざ日報に「14:32 たぶんセンサー誤作動 3分停止」と書く人は実際のところあまりいません。
そうした小さな事柄の積み重ねが、月末には「数十時間」になっているというケースがざらにあります。

この3つの理由が重なって、現場にもリーダーにも「見えていない停止時間」が大量に潜んでいる状態が生まれるのです。

「日報上は問題なし」なのに生産数が計画を下回る

この見えない停止時間の本質は、システム上は問題が見えないところにあります。

ある自動車部品メーカーで、ちょうどこの現象が起きていました。
日報を見る限り、生産は順調に進んでいる
大きなトラブルはとくに記録されておらず、現場リーダーも「今週は問題なし」と報告している。
なのに、月末の生産数を集計してみると、計画を1割近く下回っている

管理部門には説明がつかず、現場に聞いても「はい、頑張ってやってたんですけどね…」という返答しか返ってこない。
現場はサボってもいないし、届けている日報に嘘を書いてもいない。なのに、数字が合わない。

ここにIoTデバイスを取り付けてデータを見ると、犯人はすぐに明らかになりました。
一日の中で、個々の機械が平均して合計2~30分も停止している
それをかける50台、かける20日となれば、本当に生産計画を1割下回る不足時間になるのです。

可視化されたとたん、何が起きたか

このメーカーでは、DsyncというIoT見える化システムを入れたことで、次のような連鎖反応が起きました。

第1段階:ちょこ停の可視化

画面上で「いつ」「どの機械が」「何分間」止まったかが見えるようになった。
すると、多発している機械と、そうでない機械が明らかになりました。

第2段階:原因の調査

多発している機械を現場と一緒に調べてみると、定期メンテナンスのタイミングが適切でないという事実が判明しました。
メンテナンス部門は自分の担当領域のことしか考えておらず、他部門の生産スケジュールとボタンが掛け違っていたのです。
また、一度生産に追われてしまうとメンテナンスは二の次になってしまっていました。

第3段階:ルールの見直し

この事実をもとに、メンテナンスルールを部署横断で見直しました。
さらに、夕方に仕事を早めに切り上げているケースもデータから見つかりました。
17時までの生産予定が16時40分には止まっている。
それを揃えるだけでも、全体としては相当の生産アップに繋がります。

第4段階:改善効果の測定

ルールを見直した上で、もう一度Dsyncで計測し直す。
「何をやったら、どれだけ効果が出た」がグラフで見える状態になり、改善を続けるサイクルが回り始めました。

「ちょこ停」は現場の質のサインでもある

最後に、もう一つ重要な視点をお伝えします。

ちょこ停が発生しているということは、単にその時間だけ生産が止まっているという話ではありません。
設備が潜在的なトラブルを抱えている徴候であり、オペレーターの迷いや判断の難しさの表れであり、生産ラインのバランスの乱れのサインでもあるのです。

このサインをキャッチできるかどうかが、中長期で見たときの工場の品質やコスト競争力に影響してきます
大手の顧客から品質クレームを受けて初めて「そういえばあの機械、よく止まってたよね」と思い出すようでは、もう遅いのです。

見えるようになれば、議論が始まる

ちょこ停をゼロにするのは不可能です。
しかし、「見えるようにする」だけなら、今すぐにでもできます。

リーダーがぐるぐる回る代わりに、画面で稼働状況を見る。
ダッシュボードに「今週、ちょこ停が最も多いトップ5台」が表示される。
それだけで、現場との議論は一変します。

「もっと頑張れ」ではなく、「2番の機械、今週ちょこ停30回も出てるんだけど、何か心当たりない?」と話せる。
現場も、そう言われて初めて「あ、そういえばあの設備、最近調子が悪いんですよ」と話してくれる。

議論の質が変わるのです。そして議論の質が変われば、打てる対策の質も変わる。

まずは見えるところから

ちょこ停は、見えないから放置されているだけで、中身を見れば必ず原因があります。
そして、その原因の多くは、現場と管理サイドがデータを見ながら話せば解決可能なものなのです。

高価なMESもスマートファクトリーも不要です。
まずは1台、2台の機械に小さなIoTデバイスを取り付けて、「ちょこ停を見えるようにする」ところから始める
その一歩が、思った以上に大きな改善に繋がります。

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#4 チョイデジのDsyncとは何か — ラズパイベースの小型IoTデバイスでできること・できないこと

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